未曾有の危機から考える
これからの働き方・暮らし方
〜改めて考えたいソナエとは?
新型コロナウイルスが全世界で猛威をふるっています。
友だちとおしゃべりをしながらご飯を食べたり、会社に出勤して仕事に励んだり、楽しみにしていた映画を観に行ったり、スポーツジムで汗を流したり……。そんな、ずっと当たり前のものと思っていた私たちの働き方や暮らし方を、コロナが拡大のなか私たちは変えざるを得なくなりました。
これから、私たちの社会は、どのように変わっていくのでしょう?
私たち一人ひとりの行動は、どのような変容が起きていくのでしょう?
いまはきっと、先の見えない不安を感じている人が多いのではないでしょうか。また、未来に向けてどのように行動を起こせばいいかわからずに人も多いのではないでしょうか。
今回の未来勉強会は、そんなコロナによって変わりゆく社会を反映して、初のオンライン開催となりました。リスクマネジメントをテーマに活動するニュートン・コンサルティング株式会社の林 和志郎さんをゲストにお迎えして、運営も参加者もみんなバラバラの場所からオンラインで繋いでセッション。いま起きている時代の変化を捉えながら、私たちにできることについて対話を行いました。
※このイベントは4月22日に行われたものです
リスクマネジメントに取り組むと組織に活力が生まれていく
今回の未来勉強会の会場は新型コロナ感染拡大の影響を受けオンラインへ。ビデオ会議ツールのZoomで参加者とゲストと運営をつなぎ、また、資料もGoogleスライドで用意。会場をオンラインすることで、勉強会の新たな可能性にチャレンジしました。
最初にZoonのアウトブレイクルームやチャット機能を使いながら、みんなで自己紹介や簡単なアイスブレイクを実施。オンライン環境やZoomの使い方に慣れることから勉強会は、始まりました。
みんなが場の雰囲気になじんできたところで、今回のゲストスピーカーであるニュートン・コンサルティングの林 和志郎さんに話し手のポジションをバトンタッチ。プロの視点からリスクマネジメントについてのインスピレーショントークを提供していただきました。
林さん)今回のコロナを見てもわかるとおり有事は起こります。ですから日頃から危機的な態に備えたり、対策をしていたりしておくことが大切です。私たちニュートン・コンサルティングは、いざというときに困らないように『「あの時もっとこうしておけばよかった」を世界からなくしたい』というビジョンを掲げて活動しています。
さまざまな組織のリスクマネジメントの相談に乗っていると、そもそもリスクについて考えることは、“危機が発生したときに対応できる組織になれる”だけでなく、“平時から強く活力のある組織になれる”というメリットがあるそうです。
林さん)“リスクマネジメントのマニュアルをつくってほしい”という相談をいただくこともあります。でも、それではあまり意味がありません。実際に危機が発生したときに動ける組織になっておく必要があります。そうなると、その組織のコミュニケーションのあり方や組織の風土を問い直すことになります。改めて組織を見直すことになり、結果的にコミュニケーションの改善などが行われて、組織が生き生きとしはじめることになります。
“コミュニケーションを見直すこと”は、リスクマネジメントの考え方を取り入れるうえで大きなキーポイントとなるそうです。
林さん)情報を発信することも大切です。たとえば安倍首相はアベノマスクの施策でずいぶん叩かれました。あれも伝えるべき情報がきちんと伝わっていないという背景があります。たとえば、洗って繰り返し使えるマスクであることや、医療現場に優先的にマスクを届ける必要があることを最初から丁寧に国民に伝えておけば、批判的な風潮ももう少し変わっていたのではないでしょうか。
リスクマネジメントを5つのレベルで評価する
今回、香港はウイルスの早い段階での封じ込めを行うことができました。国内に感染者が5人の段階であった1月25日、緊急事態宣言を発動。国が一丸となって高い危機意識を持って対策に取り組みました。
※日本は緊急事態宣言を4月7日に発令。4月6日12時の時点での国内感染者は3817名(患者2551名、無症状病原体保有者294名、陽性確定例(症状有無確認中)91名)、国内死亡者は80人
林さん)どうして香港は迅速に対策をすることができたのか。これは17年前にSARSを体験していることが大きいです。当時、痛い目を見た人たちが、今回、同じ轍を踏むまいとがんばったのです。国民もそれを理解していたので事態を真摯に受け止めました。
できれば関わりたくないけれど、避けがたく襲撃してくるリスク。リスクとは、どのようなものと捉えればよいのでしょうか──、ニュートン・コンサルティングでは、5つのレベルでリスクマネジメントの状況を扱っているそうです。
林さん)数字が上がるごとに度合いが増していくとして、リスクのレベル1は「失敗が起きてから対応する」、レベル2は「一度起きた失敗を繰り返さない」、レベル3は「世の中が経験済みの失敗に備える」、レベル4は「世の中も未経験の失敗に備える」、レベル5は「全社的リスクマネジメントを行っている」です。
レベル1や2は、一度起きたことにを繰り返さないようしっかり対応しておこうというもので、危機に対する基本的な姿勢と言えそうです。レベル3は、自分たちの組織は経験してないけれど、世の中が経験した危機に対して対応しておこうという姿勢です。そして、レベル4は世の中も経験していない危機に対応しておこうという姿勢となります。
林さん)レベル5は、経営層だけが危機意識を持つのではなく、組織全体で共通認識を持って危機に取り組んでいこうという状態を表しています。
いま、世の中全体がコロナの影響で危機にさらされています。そんないまこそ組織全体でコミュニケーションのあり方を見直すタイミングが来ていると感じています。
──さて、林さんのそんなインスピレーショントークの後は、簡単な質疑応答が行われました。
質問)リスクマネジメントができている企業とは、レベル1~5のどのあたりに対応している印象ですか?
林さん)同じ失敗を繰り返す組織ってありますよね。過去に商品を回収するような事態になったのに、数年後、また同じようなことを起こしてしまうよな。レベル1~2に対応ができていないということです。こういった企業には、トップが入れ替わるなど人材の交代があり、危機管理についてきちんと後世に伝える体制ができていない場合が見受けられます。このレベルはまずいですね。
質問)体験したことがない危機はどのように設定するのでしょうか?
林さん)わかりやすいところで言えば、同業他社が体験した危機をモデルにします。“自社で起きたらどのように対応するか”を検討するとよいでしょう。また、同業他社を超えて、起きるかもしれない危機について話し合える体制を整えておくことも大切です。みんなで危機を想定したら、コストや時間などからマトリクスを作って、対応の優先度を検討することもできます。
未来を見据えて、どんなソナエができるだろう?
林さんのインスピレーショントークの後は、みんなで対話のセッションを行いました。
セッションの流れは、
- グループをつくる
- 今の変化を洗い出す
−<働き方の変化>何(主語)が、これまでは○○だったが、今は○○になった。
−<暮らし方の変化>何(主語)が、これまでは○○だったが、今は○○になった。 - 未来を洞察する
−変化を踏まえて、未来にはどんなことが起こりうるだろうか? - 未来へのソナエを具体的に考える
−未来へ向けて、どんなことにソナエたいだろうか?
−そして、日常から何に取り組むか?
についてみんなで対話を行う、というもの。
Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って4~5人程度のグループに分かれて、じっくり対話を広げて、そして深めていきました。
【②いまの変化を洗い出す】では、
- 週に3回くらいイベントに参加していたけれどすべてなくなった。オンラインに移行した
- 通勤時間がなくなったので、使える時間が増えた
- 対面じゃないとダメだと思っていたことが、対面じゃなくてもだいじょうぶなことがわかった
- 在宅が増えて、家族といる時間が増えた一方、家を狭く感じるようになった
- 新規営業がしにくくなった
などの意見が出ていました。
【③未来を洞察する】では、
- 仕事のリモート化が一般化しそう。地方に住んでいても仕事ができるので、地方が活性化していく
- 監視社会化する
- 感情を豊かに伝えられるようになるなど、オンラインの場が充実していく
- コミュニケーションのスキルや創造性の有無が世の中の大きなモノサシになる
- コミュニティの価値が高まっていく
などの意見が出ていました。
そして、それらを踏まえての【④未来へのソナエを具体的に考える】では、
- 助けてくれる人や助けてあげられる人との接点を増やしておく
- リアルで会う価値が高まりそうなので、「リアルでも会いたい!」と思われる人になっておく
- オンラインでしっかりと家族と連絡が取れる環境を築いておく
- 日頃から技術の幅を広げたり、体調管理をしっかりと考えておきたい
といった意見がありました。
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今回、オンラインで出会って、「初めまして!」の間柄も多いなかで、少人数でのブレイクアウトセッションも体験。未来勉強会初となるオンラインセッションは、こうしてあっという間の2時間を終えました。
セッション終了時には、Zoomの画面を通してだから定かではないのですが、みんな、なんだかほっこりとした表情に。すぐにでも取り組める新しいアクションを思い立ったからかもしれませんが、──もしかしたら、それよりなによりコロナでもやもやしている気持ちをみんなでトピックとして取り上げられたことがよかったように感じられました。
ニュースを見ると、重たい話題がたくさんあります。そんなとき、一人で考えるのではなく、みんなで、未来に向かってできるソナエについて、前向きにアクションを考えていく……。こんな時間が、いまの私たちには貴重なのかもしれません。
未来勉強会が、またいつオフラインになるのかはいまのところ未定です。ただ、オンライン対話で未来を作り出していく可能性を、しっかりと感じることができたこの日のセッションでした。
※当日は、25名くらいでのスクリーンショットだったのですが、手慣れておらずサイドバーの方のみとなってしまいました。
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ゲスト インスピレーショントーカー:
林 和志郎(はやし かずしろう)
ニュートン・コンサルティング株式会社 アソシエイトシニアコンサルタント
前職で人材派遣、業務委託・請負の企画提案業務に携わっており企業のリスクマネジメントへの取組みが結果的には雇用者の生活に大きく関わると実感しました。リスクマネジメントの中でも、BCP策定率は大企業約3割、中堅企業約1割という現状に将来への不安と危機感を覚えます。
「BCPを策定することで大切な人たちの笑顔を守れる」
特に、共に働いてきた取引先・仲間を守れる可能性があります。ただ単に書面上のBCPを策定するのではなく、有事の際に艱難辛苦を乗り越えられる「機能するBCP」策定を企業の皆様と共に生み出したいと考えております。何卒宜しくお願いします。
2014年 社内BCMSリーダー、ニュートン・アカデミー講師
ファシリテーター:
最上 元樹(もがみ げんき)
株式会社フューチャーセッションズ
イノベーション プロデューサー / 青森県藤崎町 地域共創アドバイザー
2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。 2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。 市民・企業・行政といったセクターを越えた場づくりを活かして、大手企業の新市場領域や新技術領域、実証実験のプロデュースから、共創ファシリテーションの講師などを行い、現在に至る。
株式会社フューチャーセッションズ
https://www.futuresessions.com/
記:井上 晶夫
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