あそびって昔は、もっと単純なものだったような気がしませんか?
手あそび、しりとり、鬼ごっこ、砂のお城、ミニカー、お人形さん、水鉄砲、ボードゲーム、テレビゲーム……。ただ、みんなで一緒に楽しい時間を過ごせたらいいなというイメージです。
でも、近年、あそびは、ただ楽しむだけでなく、学ぶこと、創造すること、夢中になることなど、その本質的は掘り下げると実にバラエティ豊か。その価値が再確認されています。
今回のフューチャーセッションズ未来勉強会では「あそび」を探索。ロボットを使った新しいあそびのプラットフォーム「toio」開発者であるソニー・インタラクティブエンタテイメント T事業企画室 課長 田中章愛さんをお迎えして、あそびの価値を再定義するセッションを開催しました。
新しい遊びのプラットフォーム「toio」って?
最初に、ストーリーテリングとして、田中さんから「toioとは何か?」というお話と、toioが生まれた背景について語っていただきました。
▼toioについてはコチラの動画をご覧ください
toioはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から2019年3月20日に発売された、ロボットを使った新しいあそびのプラットフォームです。
パッケージを購入すると、なかには「toioキューブ」と呼ばれる小さなブロック状のロボットと、ソフトウェアが入る「コンソール」、吊り輪のようなコントローラーである「toioリング」が2つ付属しています。この3つのパッケージが、わかりやすく言うと、ゲーム機本体のようなものです。
ゲーム機のソフトのように専用タイトルを入れ替えることで、toioはロボットプログラミングをベースに創意工夫をこらしたあそびが楽しめるように設計をされています。
田中さん)toioは、創意工夫をしながら楽しくあそぶために開発されたロボットなんです。パッと見は、なんの変哲もないただのキューブですが、夢中であそんでいるうちにプログラミングが学べたり、好きに装飾して動かせたり、自由度の高いあそびが楽しめるようになっています。
そんなtoioですが、ロボットプログラミングという文脈を持っているせいか、“教育にいい知育玩具”のような評価をされることが多いのですが、わたしたち開発チームは、もっと多くの可能性を含んでいるのではないか?と捉えています。
だから、あそびの概念をひっくり返すような、新しいキャッチフレーズのようなものを作れないかと思っています。今日はみなさんと一緒にそれを考えていけるとうれしいです!
生粋のロボコン少年が届ける新しい創造のヒント
ロボット開発者としてtoioを生み出した田中さん。そのルーツを辿ると、根っからのロボット少年だったようです。
田中さん)出身は佐世保高専(佐世保工業高等専門学校)で、『NHKロボコン』に出場するようなロボコン少年でした。進学した筑波大学でもレスキューロボット世界大会にて、走破性部門で1位になったりと、ずっとロボットをつくっていますね。ソニーに入社してからも研究所で人の役に立つロボットやロボット技術を使ったエンタテインメントの研究開発を行っていました。
一時期は、シリコンバレーに留学してスタートアップ企業を個人的に手伝うこともやられていましたが、田中さんはその時も常にロボット研究の道を歩んできました。
toioは、そんなロボコン少年だった田中さんが手がけている、あそびの可能性を広げながらロボットについて学ぶこともできるものです。
田中さん)ソニーには、自分たちの好きな研究をしてしまう「放課後活動」という文化というか社風があるんですよ。その放課後の活動で出会ったアレクシー・アンドレとの共同開発で生まれたのがtoioです。
二人で「ロボットにキャラクターを乗せて遊べたら最高だね!」なんて話をしながらつくってみたら、子どもだけでなく親にもウケるロボットが生まれました。それが2012年頃ですね。
当時は、商品にできるところまでは完成度が高くなくて、一時は研究がストップしてしまったこともあったそう。。。それでも田中さんは「開発が楽しかったし、あきらめたくなかった」という胸に湧き上がる想いを基に、腕の立つエンジニアを巻き込みながら、ソニーのオーディションを突破しました。そして、モデルチェンジを繰り返して、プレイステーションの開発チームをも巻き込む、大きなプロジェクトへと成長させていきました。
toioの可能性に魅せられるクリエイターたち
toioは専用タイトルを切り替えることで、あそびの幅が広がっていきます。現在は、さまざまな分野の方がtoioの可能性に興味を惹かれて、専用タイトルの開発に関わっているのだそう。
田中さん)たとえば『GoGo ロボットプログラミング 〜ロジーボのひみつ〜』は、絵本に描かれた問題を、プログラミングをしたtoioで解いていくものなのですが、、、この商品には『みんなのGOLF』のプロデューサーが関わっています。パッと見ると簡単そうなのですが、ゲーム性が高くて、大人でも簡単に攻略できない難易度になっていますよ。
ほかにもボードゲームのクリエイターや、NHKの音楽プロデューサーなど、さまざまな分野の方とのコラボレーションが生まれています。
あそびの「社会的」「情緒的」「機能的」価値ってなに?
田中さんのストーリーテリングの後は、みんなでのセッションがスタートです!
ゲーミィフィケーションという言葉もあるように、仕事であれ勉強であれば、ありとあらゆるものにあそびの要素は組み込まれるようになりました。むしろ“楽しみながら”というコンセプトが入っていない商品やサービスはすたれていくような傾向が見られています。
あそびは、さまざまな役割を果たすようになってきました。あそびを通してスキルアップをすることもできるし、いろんな気づきを得ることもできます。また、ストレス解消やひまつぶしなど、多様な分野に埋め込むことが可能です。
そこでセッションでは、“あそび”に、どのような価値が含まれているかを「社会的」「情緒的」「機能的」という3つの軸から考えて、キーワードを書き出してみましました。
参加者みんなで3つのテーブルに分かれ付箋にどんどんキーワードを書き出してきます。
みんなでキーワードを出し合って、それらの言葉を共有したあとには、今度は“あそび”の対極にある言葉を考えてみました。
遊びの「情緒的」な価値が、“よろこび”だとしたら、その対極にある言葉は“かなしみ”かな……!? なんて感じに、あそびを多角的な視点で捉えていきます。
そして最後は、みんなで考えまくった、“あそびの価値をあらわす言葉”や“あそびの対極にある言葉”から、あそびを表現する新しい造語を考えてみました。
あそび心あるユニークな言葉が次々誕生!?
最後は、一人ひとりが考えた『未来に使われるあそびの新しいキャッチフレーズ(造語)』のプレゼンテーションです。
あそびに関心を持った人が集まったからでしょうか。ユニークな言葉が、たくさん生まれました!
【プレゼンテーション】
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4F(フォース):
Fun、Free、Force、Futureの4つの言葉の頭文字を合わせて「4F」です。さきほど、あそびの対義語を考えたときに、不安という言葉ありまして。不安って、Funという言葉に響きが似ているなぁというところから発想を膨らましてみました。 -
あづきん:
あそびにはいろんな気づきがありますよね。それこそ、平仮名の「あ」~「ん」まで、と言えるくらいに幅広く。そこで、気づきが「あ」から「ん」まであるものとして、「あづきん」です。 -
ASBY:
Active Society for Bright……とまで考えてみたのですが、どうしてもYが出てきませんでした。Yが何の頭文字かはみなさんで考えてください(笑)、と。その考える余地が残っているところがまた、"あそび"かなと。 -
予想を飛び越える:
自分が主役:
遠まわりこそが宝物:
わたしは標語のようなものを3つ考えてみました。 -
創造哲学:
宗教哲学や科学哲学なんていう言葉がありますよね。あそびも何かをつくり出していると言えます。だから、あそびを哲学する、というような言葉を考えてみました。 -
工夫:
自由と平等と工夫が合体したようなイメージです。ロゴのような感じですね。 -
Fun+×:
楽しさと何かをかけあわせて「ファンタクロース」、そして、楽しさと何かを足してみて「ファンタスティック」です。 -
時計倒し:
時間を忘れて楽しむというイメージから、時計を倒してしまうといった感じです。また、「倒す」という言葉は、ゲームによく出てくるなと思いまして。 -
全心活動:
「全」か「前」かに悩みましたが、やっぱり心がいいかなって。あそびとは心の活動です。心がないとちゃんとあそんでいないような気がして。だから、全心の活動としてみました。
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あそびをキーワードに分解して、まったく別のものに組み立て直してみて。
そんなふうに言葉であそんでいるうちに、あそびの中にある本質的な部分がちらほらと垣間見られたセッションになりました。
あそび……。改めて考えてみるとかなり深いテーマです。そしてこの未来勉強会のセッションにも、根底にはあそび心が流れているなと、改めて発見したのでした!
ゲスト インスピレーショントーカー:
田中章愛(たなかあきちか)
ソニー・インタラクティブエンタテインメント
T事業企画室 課長/toio開発者
2006年筑波大学大学院修了。同年ソニー(株)入社。2013年~14年スタンフォード大学訪問研究員。ロボティクス分野の研究開発を経て、2014年よりソニーのスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム(SAP、現SSAP)やCreative Loungeの企画運営に携わる。2016年SAPの新規事業としてtoioプロジェクトを提案、以降商品化・事業化に従事。2018年より現職。Business Insider BEYOND MILLENNIALS Game Changer 2019グランプリ(Career部門)。
ファシリテーター:
最上 元樹
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー
2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。 2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。 大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る
株式会社フューチャーセッションズ
https://www.futuresessions.com/
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