未来Lifeセッション 「『食』から創る未来(第二回)」
Mission
20年後、私たちの暮らしがどのようになっていると嬉しいのでしょう?自分自身や、大切に思う誰かの暮らしを想像しながら、それを取り巻く世界を様々な視点で共有し、ありたい姿を考えるのが未来Lifeセッションです。
今月のテーマは「『食』から創る未来(第二回)」。そして、サブテーマを「誰もがホンモノの野菜をうけとるには?」として開催します。(サブテーマは6月開催セッションのアウトプットを統合して設定しました)
今回は、20年後の未来シナリオを2軸(農作物の生産形態、私たちの生活スタイル)で分類し、それぞれの未来に対してICT活用を絡めながら実現の可能性を探っていきたいと思います。
そして、今回のインスピレーショントークは、NECの渡辺周さんから「インドでいちご農園ものがたり~ICT活用が笑顔をつなぐ~」と題してICT活用の可能性をお話しいただきます。
20年後の ありたい未来を探りつつ、創造力と想像力を刺激するワークを楽しみながら、普段見えない何かを見つけ、未来Lifeへの行動のヒントをお持ち帰りください。
インフォメーション
- 開催日時
-
2016-09-12 (Mon)
18:00 ~ 20:30 - 応募締切日時
- 2016-09-12 (Mon) 10:00
- 会場名
- NECソリューションイノベータ本社ビル
- 住所
- 東京都江東区新木場1-18-7
- > google mapで表示
- 定員
- 20 人
- 参加費
- 無料
- Information note
参加ご希望の方は、事前アンケートのご記入をお願いしております。入館手続きに必要な情報となりますので、ご理解のほど何卒よろしくお願いします。
尚、参加希望多数の場合は抽選とさせていただきます。
[個人情報に関する取り扱い]
ご提供いただいた個人情報は、当社の個人情報保護方針に基づき、適切な管理に努めております。
- 主催者
NECソリューションイノベータ株式会社
経営企画部 CSV推進室
20 年後の未来についてオープンに語り合う場
平成28 年9 月12 日18 時、NECソリューションイノベータ(株)主催の対話&ワークショップ『未来Lifeセッション“食”から創る未来(第2 回)』が開催されました。そのレポートをお届けします。(会場 NECソリューションイノベータ本社ビルサロン)
NECソリューションイノベータは、NECグループが展開する社会ソリューション事業をICT で担う中核ソフトウェア企業として、さまざまな社会課題の解決を目指しています。近年特に力を入れているのが、幅広いステークホルダーとの“共創”に関する活動で、『コ・クリエーションSpace』という対話と共創の場を設け、幅広い参加者を集めてセッションを重ねてきました。
6 月より、20 年後の未来をいろいろな視点で考え、共有し、“ありたい姿”を想像していく『未来Lifeセッション』というセッションをスタート、今回は第2 回となります。
セッションのテーマに賛同して集まったのは約20 名。前回の社外からの参加者も含め多彩な顔ぶれが集まりました。今回は会場をNECソリューションイノベータの1 階サロンというオープンな場に設定。参加者同士がより気軽に、親密に対話ができるような雰囲気作りがされています。
セッションのルールは5 つ!
まず事務局の挨拶からスタートし、ファシリテーターの角野さん(NECソリューションイノベータ)が、セッションの進め方やワークについて説明します。
「本日は“20 年後こうありたい姿”を考えますが、次のルールで行きましょう」(角野さん)
- 『未来人』(誰も間違っていない!未来は可能性に満ちている)
- 『主語は自分』(私はどう思う?どうしたい?)
- 『協働・共創』(参加者全員で創り出す)
- 『守秘義務』(秘密リクエストは伝える、守る)
- 『楽しむ』(つながりや新しい価値は楽しい場から生まれる)
続けて角野さんより、本日のゴールが提示されます。
- ワクワクする未来イメージを創る
- 実現につながる可能性を見つける
「この2 つを見つけて、ぜひお持ち帰りください」(角野さん)
角野さんは参加者に、周りの人と「対話のレッスン」を行うよう促します。しばらく対話をして慣れてもらった後、ペアを変えての対話を行いますが、そこで1 つの「問い」が与えられます。「あなたにとって本物の野菜とは?」
しばらく対話した後、また次の問いが与えられます。「本物の野菜を得たくても得られない理由は?」これらは、次のインスピレーショントークをより深く受け止めるための予習でもあるようです。
渡辺周さんのインスピレーショントーク
ゲストのインスピレーショントークに入ります。ゲストはNEC事業イノベーション戦略本部の渡辺周さん。NECで新規事業としてICT を活用した農業の立ち上げをされています。タイトルは「『インドでイチゴ農園ものがたり』~ICT 活用が笑顔をつなぐ」。
「私はいつか社会課題の解決に取り組みたいと考えました。そのために、世界で起きていること、自分の周りで起きていることを気にかけるようにしました」(渡辺さん)
渡辺さんは、食糧危機や、飢餓と貧困など世界の課題をスライドで示します。
こうしたことを『自分ごと』として捉え、何をすればいいのか。渡辺さんは前の職場で、それまでのキャリアを一旦ゼロにして考えたそうです。すると次のような考えが浮かんだとのことです。
- 海外に関わる仕事をしたい
- 日本の技術を生かした仕事をしたい
- 人の役に立つ仕事をしたい
「いろいろ考えた結果、日本の技術で発展途上国の健全な発展に貢献する、ということに『自分ごと』が定まりました」(渡辺さん)
渡辺さんはキャリアチェンジを決め、NECに転職し、思いを実現すべく現在の事業に携わっているとのことです。
インドでの「イチゴ作り」は大評判に
続いて渡辺さんは、インドで展開している農業(イチゴ作り)についての資料を投影しました。
インドでのNECのミッションは“農村エリアに雇用を作ろう”ということ。その手段は「日本の農業」そして「NECのICT 技術」です。
「栽培システムをNECが提供します。2011 年から調査を開始し、2012 年から事業を開始しました。いいパートナーのNGO が見つかり、2014 年から今年夏まで事業の検証を行っています」(渡辺さん)
活用したのがNECの「圃場管理システム」。あえて全てを自動化せずに、インドの労働者に「自分で写真を撮る」という作業をやってもらったのがよかった、と渡辺さんは語ります。全てを自動化するとサボる人が出てくるとのこと。自動化できる部分も、あえて彼ら自身で作業してもらい理解する。理解してから自動化するというプロセスが大切なようです。
「作ったイチゴをホテルなどに持ち込んでシェフに評価を聞いたりしたのですが、評判は上々。現地ではわれわれの事業は注目され、農業大臣から表彰されました」(渡辺さん)
現在、渡辺さんたちはこのイチゴ作りの事業モデルを、新しく農業をはじめたい人にフランチャイズとして提供しており、現地の投資家からビジネスとして注目されているそうです。聞いていると全て順調なように見えますが、課題もあるとのこと。
「現地の自立化ですね。マネジメントも現地で回せるようにしたいのです。また、大量に消費されるので、数年後を考えると、どうやって生産量を増やすかということもテーマです」(渡辺さん)
渡辺さんは「(大切なのは)自分が取り組んでいることが、より世の中の幸せに貢献し、大きなインパクトを産むことを信じること」と述べて話を締めくくりました。
参加者と登壇者との対話
次にインスピレーショントークを聞いた参加者と、渡辺さんとの対話が行われました。
「自分の想いを持って転職したというのがすごいなと思います」と、参加者からはまず、渡辺さんのキャリアチェンジについての感想が述べられました。
「実は決めてから1 年半ぐらい、迷っていたんですよ(笑)。周りにも反対されました。その時ついていた仕事にも満足していたんですが、その先に自分のやりたいことはないなと感じました。2011 年の東日本大震災もきっかけの1 つですね」(渡辺さん)
次に角野さんから「イチゴそのものは富裕層向けのようですが、そもそもは誰に農作物を届けようと思ったのですか?」という質問が。「届ける先はあまり意識してなかったですね。“仕事を作らないといけない”というのが先でした」(渡辺さん)
ここで角野さんから、「本物の野菜を誰がどこでどのように育てているとうれしいのでしょうか?」という問いが出され、参加者と渡辺さんの対話がこの問いに沿って続けられます。
ある参加者からは、「作り手の顔が見えること。どこで、どんな人が作っているのかがわかるとうれしい」とのコメントが。
さらに会話を活性化するため、角野さんが、第一回『未来Lifeセッション“食”から創る未来』にも来ていた参加者を対話に引き入れ、「前回、牛乳という視点で“顔が見える”というお話がインパクトありましたね~」と一言。
それに対し、「われわれメーカーは購入者の顔まで見えていません。しかし生産者の顔、牛の顔、においなどを新人研修で牧場に行き体験しているのです」とのコメントがありました。
さらに渡辺さんからは「ぼく自身、農場で食べるととても美味しいと感じます。その状況を家庭で再現できればいい。パックに入れるとわからなくなりますよね。それをちゃんと価値にして伝えられれば」と意見が出るなど、さまざま感想や意見が飛び交う意義深い対話となりました。
グループに分かれて「未来新聞」作りへ
続いて参加者全員で実施するワークに入ります。未来を4 象限に分けて考え、象限ごとにチームを作ります。
- 縦軸 アクティブ ⇔ スロー
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横軸 大規模生産 ⇔ 自給自足
「まず20 年後のワクワクする未来イメージを創り、20 年後に発行されるであろう“未来新聞”の記事を書いてください。それを最後のアウトプットにします」(角野さん)
4象限の中から、参加者の皆さんが各々関心のあるところに集まると、グループは3つに。それぞれのグループで20 年後を想像しながら対話をすすめ、思い思いの“未来新聞”を作りました。
出来たグループから未来新聞を壁に貼り出し、どんな未来になったのか、それはどんな風に実現されたのかなどの発表を行います。
象限(3) グループ新聞の見出し「旬の木場産ニンジンできました」
「大規模農業でできる良さ。それはみんなに供給できることです。(私たちが想像したのは)昨日の旬は豊洲、今日は新木場産と地場野菜を届ける姿です。ドローンが旬なものを届けます」(参加者)
象限(2) グループ新聞の見出し「循環するエコシティ現る」
「人間が生活していくための最小単位は170 人と聞いたことがあります。170 人のコロニーで生産、流通を成り立たせます。そして、ライフサイクルにあわせて、容易に立場を変えられる。地域通貨や物々交換もキーワードです」(参加者)
象限(1) 新聞の見出し「日本企業がICT で農業スタイル変革」
「ICT 農業で世界のどこでも安定した大規模農場を経営することが可能になります。世界から貧困を無くしていきます。そして、農業をやるなら企業に入るのが一番と言われるようになります」(参加者)
各発表が終わり、それぞれに拍手が送られ、セッションは締めくくりとなります。
そして最後は、全員が1 つのサークル(輪)になり今日の感想や気づきなどを話しました。
まず渡辺さんから「普段、農業へのICT 活用を考えてるのですが、今回『本物の野菜』というキーワードを入り口に未来思考で発想すると、今まで思いつかなかったアイディアや気づきなどがありおもしろく感じました」という感想が述べられました。
また、参加者からもいろいろな感想が述べられました。
「予備知識なく来たのですが、いい刺激になりました」
「実家が農家でいつも美味しいものを届けてくれる。これをどうして行けばいいのか考えさせられました」
「将来の『食』ビジネスへの関わり方を検討できたのがよかったです」
「一番身近なテーマ『食』なのに、みなさんが自分と違うこだわりを持っていたのが新鮮でした」
「技術の進化&活用と、自然に寄り添う事と、その両方をあわせて考えられるということ
が大きな気づきでした。この発想は業務に活かせそうです」
etc.
そして、参加者からの最後の一言が、全員に深い気づきを与えたようです。
・「『我々は命にとって大切な食でさえ安い方を選択する。それは我々の希望ある未来を創造していく上で価値ある選択なのだろうか?』ということさえも考えずに、今の経済を動かしている。その先の未来に何があるのかを、今、考えていきたい」
18 時にスタートしたセッションはあっという間に時間が過ぎ、終了。閉会後も、参加者は名刺交換をしたり、今回のセッションについて述べ合うなど、余韻を楽しんでいる様子が見られました。
(取材・構成 藤木俊明)