論語会社と算盤会社の特徴に学ぶ
未来の事業をつくっていく会社とは?
これからの時代における“いい会社”って、どんな会社なのでしょう。
“いい会社”=“働きたい会社”と、置き換えてしまうのは少々単純すぎる気がしますが、みなさんはどのような会社で働きたいなと思っていらっしゃるのでしょうか。
各分野で先進的な活動をしているゲストと共に、参加者みんなで未来を考える「フューチャーセッションズ未来勉強会」の第13回は、ゲストにアルマ・クリエイション株式会社 池田 篤史氏をお招きして、「未来の事業を自由闊達に生み出し続ける組織とは、どんな組織だろうか?」というテーマで、セッションを行いました。
2019年2月に「人間学×マーケティング (未来につづく会社になるための論語と算盤)」(神田昌典・池田篤史 著/致知出版社)という書籍を出版された池田さん。
本の中で、未来の組織のあり方やなり方のノウハウがたっぷりと盛り込まれているようで、その内容に関連づけながらセッションはスタートしました。
本レポートでは、そのセッションの一部をご紹介します。
論語会社と算盤会社とは何か?
アルマ・クリエイションで、全国を飛びまわりながら、大企業や中小企業など、さまざまな会社のコンサルティングを行っているという池田さん。たくさんの相談を受けるなかで、会社には2通りのパターンがあることに気がついたそうです。
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池田さん)私は、コンサルティングで、このままでは会社がどんどん死んでいくのではないか、という組織の状況をたくさん見てきました。そんな中、会社には大きく2通りの状態があるように感じられるようになりました。それは、仮に名づけるとすると、論語会社と算盤会社、というものです。
池田さん)「人間学×マーケティング」のなかで、そのように記述させていただいているのですが、論語会社とは “人の育成や人の成長にコミットしている会社のこと"です。一方の算盤会社とは“徹底的な数字管理にコミットしている会社のこと"です。とにかく計測計測で、数字を追い求めるんですね。
池田さん)私の感触では、中小企業には論語会社が多く、大企業には算盤会社が多いような印象を持っています。中小企業には、人に優しいというか、人だけ見て、数字を見ていないような会社がよくあるのです。人だけ見て、どうやって経営ができるのかという話なのですが、経営者の方の話などを聞いていると、そこにフォーカスしてきたからこそ、続いてきた会社なのだなということもよくわかります。この両方のメリットを兼ね備えて会社をつくることが、未来につながると考えています。
あなたは論語タイプ?算盤タイプ?
論語会社にも、算盤会社にも、それぞれに抱えている悩みがあります。池田さんは、「論語会社のメリットと算盤会社のメリットの双方を持ち合わせた会社こそが、未来に続いていく会社なのではないか?」という仮説を立てました。そして、そういった会社のあり方となり方についてを丁寧にまとめた本が「人間学×マーケティング」なのだそうです。
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池田さん)本の中に、あなた自身の性質が論語会社寄りなのか、それとも算盤会社寄りなのかを知ることができるチェックリストがあります。試しに、いまからスライドを写すので、自分がどちらのタイプなのか客観的に見つめてから、どちらかに手を挙げて頂けますか。
池田さん)なるほど、なるほど。論語寄りの方もいらっしゃれば、算盤寄りの方もいらっしゃる感じですね。では、もうひとつチェックリストがあります。今度は、あなたの会社は、論語会社寄りか、それとも算盤会社寄りなのかというリストです。
池田さん)これも、どちら寄りだったのか、手挙げで確認させて頂いてよろしいですか。論語会社の方も結構いらっしゃるのですね。今日来ているみなさんは、大企業の方やコンサルティング系の方が多いような印象を持っていたので、少し意外な気がしました。
池田さん)私は仕事の立場上、論語会社の方から、「人は良いのだが、売り上げを上げるにはどこに目を向けたらいいのでしょうか?」、算盤会社の方から、「売り上げは立っているが、人間関係などに大きな問題を抱えています」といった相談をよく受けます。それぞれの会社に、どのような支援を行っていったのか。そして、それぞれの会社にどのような変化が起きたのかについては、本にストーリー仕立てで事例を書いておりますので、興味がある方は本をぜひ読んでみてください。
時代はマーケティング4.0の世界へ
池田さん)「人間学×マーケティング」では、主に中小企業が対象ではあるのですが、会社が新規事業を生み出すためのステップの解説も行っています。
池田さん)私たちの会社はマーケティング会社なので、少し、マーケティングの話もしておきたいと思います。マーケティングはいま、マーケティング4.0という世界観に入っています。1.0は商品をつくって、それを説明して売っていた時代です。2.0はお客さまが中心となります。ニーズとウォンツですね。3.0はそこに社会貢献的な視点が加わります。購入の判断に社会貢献を汲み取るという感じですね。いまの世の中は3.0のような状態かと思われます。
池田さん)マーケティング4.0は自己実現です。自分の自己実現のために、例えば社員の自己実現のために商品を買うというイメージです。サービスや内容の違いはよくわからないけれど、経営者や社風が活き活きしているところから商品を買うような動きも強くなっていくではないかと予測を立てています。
マーケティングも文理融合の時代
池田さんの話のあとは、少々の質疑応答タイムを取りました。
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Q:算盤会社をよくない印象で捉えてしまいがちなのですが、そういう見方というわけではないのですよね?
池田さん)たまに、バランスよく論語と算盤の要素を兼ね備えた社長さんに出会うことがあります。その社長さんは社長さんで、「うちはこれでいいのかな?」と悩んでおられます。どちらが良いというわけではありません。セルフチェックもニュートラルに自分をチェックするためのものだとお考えください。
Q:文系、理系という理解の仕方とも違いますか?
池田さん)これはクロージングトークで話そうと思っていたことなのですが(笑)。マーケティングにも文理融合という時代が到来しています。マーケティングは人の気持ちを汲み取って購買の傾向に乗せていくということだったのですが、数字を見ることの重要性が高まってきています。そいう意味では、論語と算盤、両方が大切です。
Q:本の内容は中小企業に適応させやすい考え方だということでしたが、オーナー会社に適応できると考えてよいでしょうか。
池田さん)かまいません。言ってしまうと、経営者の内面を深く掘り下げることが重要なのです。その本当の深いところにあるものが、経営にも結びつくし、社員にも伝わっていくということです。お客さまが触れる商品にも社員にもそれが現れるということなのです。ですので、本には、経営者の内面を掘り下げて、それをサービスや社員に浸透させていく方法論が書いてあります。
グループ対話で見出す、これからの会社のキーワード
対話セッションについては、フューチャーセッションズの最上さんがファシリテーションを担当しました。
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まずは、4人一組になって、池田さんの話を聞いた感想を含めて「論語組織、算盤組織とはどんな特徴を持つ組織か?」を共有しました。
それからグループを変えて、さらに対話の第2ラウンド。さらに論語会社と算盤会社の特徴を話しながら、「未来の事業を自由闊達に生み出す組織とは?」という問いにい対して大事だと思ったキーワードを10個選びだし、それを全体に発表していくことにしました。
4グループで行われた発表は以下の通りです。
【チームA】
私たちのチームの結論としては、論語と算盤、両方の会社の特徴から、大事だと思ったキーワードを抜き出したなということです。キーワードを抜き出した数は、論語側から6つ、算盤側から4つでした。未来に続いていく、イノベーションを起こす組織は、論語と算盤の要素がバランスよく混ざり合っている会社なのかなと思いました。
【チームB】
私たちのチームは論語側から5つ、算盤側から3つ、そして、その中間から2つのキーワードを選びました。論語側からは「社会のためになること」「想像力」「個が尊重」「主体性」「小さな失敗がゆるされる」。これらの要素はアイデアを生み出すために重要なポイントだと思いました。
最終的なビジネスな結果として「データ重視」「外部環境」「マネタイズ」が重要だと感じました。
【チームC】
このチームは完全論語です。数字が一切いらない会社がいいなと思いました。個人の話からすると、個人のやりたいという熱意が重要だと感じました。熱意と覚悟がないとはじまりません。事業をつくるのであれば、そのビジョンを共有して達成していけばいいのではないかとなりました。大事なのは夢を語り続けること。パートナー会社などの価値観も尊重できるといいよねという話になりました。
【チームD】
私たちのチームは、論語側から6つ、算盤側から2つのキーワード、そして、両方をつなぐものとして2つキーワードを挙げました。組織として、未来の事業を生み出す上ではビジョンの追及は欠かせません。働いている人の存在も大切です。ただ、ビジョンばかりに目が向いてしまうと継続できないので、やはりKPIも大切ですよねとなりました。論語と算盤をつなぐものとしては、個人と組織の目標の一致や、世の中の変化に対応していく柔軟性などが重要かなと思いました。
令和は、バランス重視のニュートラルな時代
最後に、池田さんからこんなコメントがありました。
池田さん)私自身が、今回対話の場に参加して、いろいろなことを学ばせていただいたように感じています。「論語」は四書五経のひとつですが、四書のなかには「中庸」という考え方もあります。バランスよく、ニュートラルに、ということですね。
池田さん)私は、令和はこの中庸の時代になるのではないかと考えています。西洋寄りとか、東洋寄りとか、どちらかに偏らないこと。このバランスのよさから、イノベーティブな事業が生まれてくるのではないかと考えています。渋沢栄一さんも「論語で算盤が養われる」とおっしゃっていました。私のなかでも完全に答えが出たわけではありませんが、いまはそのように考えています。そして、この場にいらしているようなみなさんと一緒に、引き続き、いい会社についての議論を続けていけるとうれしいです!
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これまで当たり前と思っていたことが次々と覆され、イノベーションが求められる時代。未来に向けて進化し続けるためには、個人も組織も「中庸的」であることが必要という考え方には説得力がありました。
論語と算盤、どちらの要素も取り入れながら、ぜひ身近なところからイノベーションを起こすことが大切ですね。
さて今後の未来勉強会は、しばらくお休みをさせて頂き、再開する際にまた告知をさせて頂きたいと思います。
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インスピレーショントーカー
池田 篤史(いけだ あつし)
アルマ・クリエイション株式会社 マネジングディレクター
「人間学×マーケティング 未来につづく会社になるための論語と算盤」(致知出版)著
18年間、20校以上のビジネススクール、社会人スクールの経営責任者およびマネジメントに従事。担当した全校を赤字から黒字化、健全経営へ転換。質の高い教育と持続的経営のバランスをとる経営手法で、3万人超の受講生、ビジネスパーソンのキャリア開発をサポート。企業のみならず、学校法人の生徒募集、経営支援においても効果をあげるマーケティング計画を立案・実行してきた。神田昌典主宰400社の中小企業の経営者が集う次世代マーケティング実践会「(通称)The実践会」を含む、中小企業、中堅・上場企業の経営コンサルティングを行う「事業創造コンサルティング部」事業部長。経営トップ・幹部の意思を、組織に浸透させていくプロセス構築・実行支援で、多数の実績。継続的な結果を生むため、デジタルツールとアナログツールを活用しながら、組織内で循環するコミュニケーション・チャンネル構築に秀でる。
ファシリテーター
最上 元樹(もがみ げんき)
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー
2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る。
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