人間が持つ知覚的な能力のひとつである感性。
感性を豊かにするにはどうしたら良いでしょうか?
AI、ブロックチェーン、IoTなど、テクノロジーの進化のスピードは、ますます速まっています。私たちの暮らしはどんどん便利になって快適になっていきます。
そんな気がする一方で、だからこそ、人間らしさを大切にしたいという気持ちも湧き上がってくるのではないでしょうか。
そこで、テクノロジーの発達が加速するいまだからこそ、人間ならではの“感性”を扱ってみたいと思います。
よく知っている言葉のように思いますが、改めて考えてみると、感性ってなんなのでしょうか。感性を磨くにはどんな方法はあるのでしょうか?
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今回は感性の研究から商品やサービスを生み出している一般社団法人KANSEI Projects Committee 柳川 舞さんをお招きして、『ヒトの豊かな感性 〜感性の磨き方とは?〜』というテーマ・問いでセッションを行いました!
本レポートでは、そのセッションの一部をご紹介します。
私たちは五感で多様な情報を無意識に吸い上げている
柳川さんからインスピレーショントークをしていただく前に、まずは参加者同士でペアになってチェックイン対話を行いました。
今回は“感性”がテーマなので、チェックイン対話にもひと工夫をプラス。。。参加者同士のペアはお互いに目を閉じ、視覚を塞いだ状態での自己紹介しました。さて、目が見えない状態だと、いつもの自己紹介とどんな違いがあるのでしょうか……?
参加者Aさん)相手の表情が見えないので自分の話がどのように受け止められているのかわかりません。“退屈してないかな?”と心配になりました。
参加者Bさん)目を閉じていると情報が少ない気がしました。真剣に話に耳を傾けないと、内容が入ってきませんでした。
視覚を失うと人は身体的にも精神的にもさまざまな影響を受けるようです。また、視覚に頼れなくなると、他の感覚器官の負担が変化する動きもみられました。
そんな体験から感性について意識を高めたところで、柳川さんのインスピレーショントークがスタートしました。
ヒトの感性を研究する感性工学に学ぶ
柳川さんは、一般社団法人KANSEI Projects Committeeの代表理事・リサーチディレクターのほか、NEKIRIKI Production株式会社の代表取締役兼CEO・プロデューサー、BÉLAIR LABのリサーチディレクターなどを勤めています。
元フェザー級のプロボクサー、キックボクサーという異色の経歴も目を惹く事業家です。
柳川さん)私が研究している分野は感性工学というものです。たとえば、香りを入れたり音を入れたりすることで、人々のコミュニケーションなどがどう変わるのかを検証しています。
もともとは、オーストラリア大使館で商務官の仕事をしていたという柳川さん。感性に出会い惹かれる中、感性工学を学ぶに至りました。
柳川さん)感性工学は50年ほどの歴史があり、さまざまな企業でプロダクトデザインにその考え方が取り入れられています。感性工学はもともと心理学と工学がミックスされたもの。プロダクトを体験したときにユーザーがどのように考えるのか。身体と心の動きを分析して、さらにプロダクトの改善に取り組んでいくのです。
感性での体験をサービスや商品につくりあげる
柳川さんの手がけるサービスや扱う商品は、感性工学という分野の中でも特殊なポジションに位置しているものなのだそう。
柳川さん)パートナー企業のビクターエンタテインメントさんとは、音についての検証を行っています。一方で、私たち自身は香りを中心にマルチモダリティ(多感感種)の検証を扱うことが多いですね。
たとえば、五つ星ホテルや東京タワーの香りのブランディングをさせていただいたり……。ホテルに漂っている香りは、言ってみればお客さまにとっての目に見えない体験です。その価値を可視化するのは簡単ではありませんでした。
香りのサービスや商品を提供する企業からすれば、どれくらいの効果があるのか、その成果を具体的な数値で知りたいところ。しかし、香りの体験はその効果をしっかりと裏付けすることが極めて困難です。
そんななか少しずつ研究を重ねて、検証データから理論的な背景を紡ぎあげていったのだそうです。
人間の身体感覚に触れる香りの力を応報
感性を活用したプロダクトは多様な分野に可能性を秘めています。
柳川さん)たとえば、居眠り運転を防ぐために、ドライバーが眠気に襲われたら、目が覚める刺激的な香りで目を覚まさせることができます。ドライバーがうとうとしはじめるサインは開眼率、つまり目の開き具合をセンサーで感知するんですね。
また、香りから連想されるイメージによって空間をデザインしていくことも可能なのだそうです。
柳川さん)こちらの棒の先に、ある香りの液体がつけてあります。みなさん、これ、なんの匂いかわかりますか……?
柳川さん)…オレンジ? グレープフーツ? いよかん?
そう、これは、グレープフルーツなのですが、柑橘系ということはわかりますよね。人間の鼻には香りを感知する受容体が390あり、約1万種の香りをかぎ分けられると言われています。ただ、390ある受容体がみんな等しく機能しているわけではないので、そこに個人差は生まれるわけです。
さらに柳川さんの質問は続きます。「では、この香りを“色”で表すと何色だと思いますか……?」。
参加者からは、「オレンジ」や「黄色」といった声が上がります。そうですよね、柑橘系と言えばやっぱりオレンジや黄色が目に浮かびます。
柳川さん)“柑橘系の香りの色はオレンジ”という認識は全人類に通じるものです。だから、風景をもっと明るくしたいときには空間に柑橘系の香りを入れるんですね。そうすると、嗅覚がオレンジ色のイメージをつくり出し、空間が少し明るく感じられるのです。
東京タワーに東京の香りをプロデュースしたり、Tomod’s DRUGSTOREの香りのブランディングをしたり、柳川さんは感性を刺激するさまざまな体験をつくりだしています。
私たちの感性をすり減らすにはどうしたらいいの?
柳川さんと参加者で感性についてのいくつかの質疑応答を挟んだ後は、みんなで対話のセッションをスタート!
まずは4チームに分かれて、私たちの日常生活を振り返って感性を探していきます。
“感性って、つまりどういうこと?”と考えながら、“感性らしさがある”ものと、“感性らしさがない”ものを、思いつく限りキーワードでピックアップしていきました。
「これは感性らしいよね」
「これは感性らしくないんじゃない?」
そんな話をしながら、模造紙の上に付箋をペタペタ。
相乗効果でどんどんアイデアがわいてきて、しばらくすると模造紙は付箋でいっぱいに。グループワークの楽しいところです。
次いで、あえて逆転の発想から「どうすれば、私たちは、より感性をすり減らすことができるだろうか?」という問いで、さまざまなシチュエーションを想像してみました。
この問いについては、グループのメンバーを入れ替えながらじっくり時間をとってアイデアを広げていきます。
笑いながら「こんなシチュエーションは、感性がすり減るね!」なんて話をしていくことで、生成的なアイデアが生まれやすい状況が満ちていきます。
感性を磨いたその先に、何が見えるのか?
そして、最後は参加者みんなで個人ワーク。参加者一人ひとりが、「感性を豊かにするプログラム」を考えてプレゼンを行いました。考えるときに、大切にしたことは、あくまでも「私が」であったり「私の会社が」であったり、主語をジブンゴトとして考えること。これにより、人それぞれのオリジナルティが生きた、そして、実現を考えられるアイデアが生み出されます。
●コミュニケーションを豊かにするラブワゴン
●肌の凹凸を利用した音楽の演奏会
●死について考える対話の会を開催する
……などなど、参加者それぞれからユニークがプレゼン行われました。
そして、プレゼンの最後は感性を考えることを日常であり仕事としている柳川さんから。
柳川さん)わたしがプレゼンするのは“無を共有する体験”です。たとえば、エベレストの頂上って匂いがないらしいんです。水の中、あるいは宇宙空間など、そういった特殊な、刺激物が無い場所に行ったら、私たちは何を感じるのでしょうか。そんな“無を共有する体験”をしてみたいと思っています。
感性を豊かにするアイデアを探索していたら、無が現れるなんて……。感性って想像する以上に奥が深そうな気がしてきました!
柳川さん)みなさんのプレゼン、素晴らしかったです。感性を豊かにするには何が必要か。その解答はまだ出ていません。でも、ひとつ感じているのは、強い刺激でなくてもいいので、多種多様なものに触れる……、匂いも、音も、感触も……。そういったことから私たちの感性は磨かれていくのではないかと思っています。
感性を磨いたその先で、何が見えるようになるのか、みなさんと共有できるとうれしいです!
今日はありがとうございました!
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感性や五感という言葉は、日常的に使われていますが、「感性はヒトツナギであること」が良く理解できました。
また、感性をすり減らすにはどうしたら良いか?を考えた上で創造した自身の特長を活かした『感性パワーアッププログラム』からは、変化に富んだ日常体験を推進するアイデアが多く生まれました。
この自分たちが考えた感性パワーアッププログラムを活かして、周囲の人を笑顔いっぱいにしたいですね。
私は、何でも笑いあえる仲間とともに、定期的に"初体験"をする機会を設けようと思います。
また、次回の未来勉強会もお楽しみに!
ゲスト インスピレーショントーカー:
柳川 舞(やながわ まい)
一般社団法人KANSEI Projects Committee代表理事&リサーチディレクター、NEKIRIKI Production株式会社代表取締役兼CEO、株式会社KANSEI Design & Co., 代表取締役会長。メルボルン大学文学部(言語学)、シドニー大学大学院経済学部、広島国際大学大学院心理科学感性デザイン学科修了。在日本オーストラリア大使館に着任、商務官としてオーストラリア企業の日本への誘致、共同新規事業開発などのプロジェクトを担当した後、2011年に香りの空間設計をするグローバル企業の子会社を東京に設立。香りを使った数多くの企業ブランディングや公共施設の快適性向上に取り組み、現在も中央大学理工学部博士課程後期で嗅覚と感性デザインの研究を続ける。世界に通用するアート性の高い調香技術を備えたチームで、統合された五感体験での嗅覚の働きを科学的に可視化するため、2019年にロート製薬株式会社と提携し、現在は嗅覚のコミュニケーションを研究するBÉLAIR LAB(ベレアラボ)でリサーチディレクターも務める。元フェザー級プロボクサー、プロキックボクサー。
ファシリテーター:
最上 元樹
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー
2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。 2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。 大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る
株式会社フューチャーセッションズ
https://www.futuresessions.com/
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