OUR FUTURES

日本には、現在約180万の中小企業があり、そのうち約6割の会社が後継者不足と言われている。後継と言っても、家業を継ぐ、後継者を求めているところを承継する、今働いている会社を継いでいくなど、いろいろなパターンが考えられる。
成熟した日本ではゼロからリスクを背負って新規に起業するではなく、すでにあるリソースを活用し、起業家マインドで会社を承継し経営していく「後継起業」という新しいスタイルに可能性があるのではないか?
第3回の働き方の未来フューチャーセッションでは、新しい働き方の1つとして「後継起業家」に着目、後継起業家フォーラム主宰 與良 昌浩氏に話を伺った。

 

 

私自身、後継者でして、実家はシステム開発をやっています。しかし大学を卒業後、家業のことを考えず、大手企業を中心に就職活動して、伊藤忠に入社しました。経理に配属されて、毎日17:30に帰るという生活で、とてもヒマでした。もっとモテそうな仕事を探していて、2年で辞めました。
外資系コンサル、アクセンチュアに転職し、戦略コンサルタントとして活動していたのですが、若気の至りもあり「コンサルは虚業だ」と先輩に楯突き、29歳のときに辞めました。

そして次に親の会社を承継することになるのですが、今思えば箱があるから入ったという感じです。
人生がここから始まりました。
親の会社で、年上の社員の方々に色々と指示を出していました。教科書通りの行動をしていました。
次々と人が辞めていく場面を目の当たりにし、風土改革なども行いました。


20代は、自分が仕事をして評価されて、時には先輩を蹴落としてでも成果を出そうと働いていましたが、「人が辞めていく」ということには無防備でした。
社員が辞めていく時に、会社や社長や私の文句を言われてトラウマになりました。いい会社を創りたいということで、マネジメントも行っていきました。
しかし、リーマンショックの影響もあって、売上げが激減し、誰にも相談できず、自分の限界を感じて、6年間の後継者人生を終えました。


次に、ベンチャーに入り直したのですが、仕事のスピード感に圧倒されました。
「明日やる」という感覚です、こういう感覚は今まで経験していませんでした。
しかし、その会社のやっていることに対して、倫理的に受け入れることができず、8ヶ月で辞めました。35歳の時です。
子どももまだ小さかったですが、初めて「無職」という職につきました。


その後、組織風土改革の会社に入ったのですが、その時先輩に「何のために働いてるのか」と問われ続けました。
それまで深く考えていなかったんですが、先輩と一緒に考え、仮で目的を持ってみました。そうすると今までの考え方が大きく変わりました。
この経験を多くの人にも知ってもらいたいという思いもあって、学生と社会人が一緒に考える場「ハタモク」という活動を始めました。
2年間で約3,500人が参加してくれました。

 

その中で1人の学生に出会います。
「いつか家業を継ぎたいが、誰に相談していいかわからない。」

彼の言葉で改めて気づきました。
親の会社に入る前に、「継ぐ」「継がない」を考える場が今の社会には無いのです。
こういう場を創るにしても、ただの「後継者候補の場」では面白くない。

ベンチャーでの経験からも、会社は事業のライフサイクルはどんどん短くなっていく、という感覚がありました。
家業を継ぐにしても、起こし続けていかなければ維持もできない。と感じていました。
今あるものをうまくやるという経験も大事ですし、親の会社を継ぐ前にも「起こす」ことを経験することはとても大事です。

そこから「後継起業家」というコンセプトが生まれました。

その観点で社会を見渡すと、ファーストリテイリングの柳井さん、星野リゾートの星野さん、ホッピービバレッジの石渡さん、生活の木の重永さんなど、多くの実践者がおられました。

 

現在は、家業イノベーション、家業を変えていくことを支援しています。
後継者が増えていくことで、日本全国にある180万社の中小企業を活かせるのではないかと思っています。
0からではなく、リソースを活かすのが新しい形ではないかと考えています。
その時に大事にしている視点が、以下の3点です。
1:絶対につぶさない
2:社員の力を活かすこと
3:事業経営を革新し続けること
そこに向けて、仕事の仕方を変えていく、後継者が増えると中小企業、社員が輝くと思います。

 

180万社の中小企業のうち約6割が後継者がいないと言われています。
直接の継承者でなくても、新しく起業することが得意な人もいます。
そういう人を「みつけ、つなぎ、支援する」プラットフォームを創っていきたいと思っています。

家業でなくとも、社内にも社員としての後継起業という形もあるはずです。

競争、競合ではなく共に世の中を創る仲間として、「後継起業」という言葉から、皆さんと何ができるか一緒に考えていきたいと思います。

 

プロフィール
與良 昌浩(よら まさひろ):1997年早稲田大学卒業後、伊藤忠商事、アクセンチュア、株式会社ユーエスエス、ベンチャー企業を経て、2010年株式会社スコラ・コンサルトに入社、企業変革の支援を行なう。社会貢献ビジネスにも関心を注ぎ、学生と社会人が「何のために働くのか」を語り合う場「ハタモク」の代表を務める。2013年2月には、「後継者を起業家にする」をコンセプトとした「後継起業家フォーラム」を立ち上げ、中小企業の元・後継者としての成功、失敗、挫折経験を糧に、後継候補者の新しい生き方・働き方、新しい事業承継のあり方を提案する。2013年6月4日 株式会社もくてきを設立し、代表取締役に就任。家庭では、妻と息子と一緒に遊んでいるときが一番の幸せ。東京都出身。


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