ファシリテーターの方へ 進行ガイド
Future Sessionを開くまでには、さまざまな準備が必要です。問いをつくったり、案内を考えたりと、やることがいろいろあります。
ここでは、時間の流れに沿って、OUR FUTURESを活用してどのようにFuture Sessionの準備や設計、そしてFuture Sessionが終わった後のケアをしていけばいいかをまとめてみました。
STEP1 アカウント登録
OUR FUTURESにアカウントを登録することで、Future Sessionの設計や準備に、本サービスをご活用いただけるようになります。
STEP2 Future Sessionの企画
問いづくり
Future Sessionは、主催者・当事者の想いをインタビュー等を通じ、問いとして言葉にすることからはじまります。
同じような領域でFuture Sessionが行われていないか、OUR FUTURESで検索し、参考にしたり、一緒にやれないか連絡をしてみても良いでしょう。
Future Session名など基本情報の入力
問いが言葉になったら、OUR FUTURESにセッション名を入力し、Future Sessionとして登録しましょう。問いに対する背景や想いは、「セッションの目的」に入力しましょう。
初期状態ではあなただけが見える状態で、あとから何回でも修正できますので、この段階では文言など完成形を目指さなくて大丈夫です。
参加対象者の検討
Future Sessionにどのような人に来て欲しいのか、どんなステークホルダーに集まって欲しいのか、「対象者」に入力しましょう。
それぞれのステークホルダーは、問いかけに集まってくれるでしょうか。もし来てくれたとして、何を感じて話すでしょうか。気づきを得れば、セッション後に行動を起こしてくれるでしょうか。このようにすべてのステークホルダーの立場を考えながら、セッション全体の意図を決めていきます。この意図は、セッションの鍵となる問いとして、セッションの目的に反映します。
Future Sessionの設計
全体の意図が明確になったら、Future Sessionの設計に取りかかります。
Future Sessionには、ベースとなる大きな3つのステップがあります。
1. 参加者の信頼感を高める
2. 参加者に自分で決めてもらう
3. 試作(プロトタイプ)してみる
そして、この3つのステップに、対話のメソッド(ワールドカフェ等)を組み合わせていくことで、進め方は変化に富んだものとなっていきます。
OUR FUTURESでは、さまざまな問いに幅広く活用可能な、「新しいアイデア」と「新しいチーム」を生み出す、上記ステップを用いた基本の進め方を標準で設定します。最初はここからはじめてみると良いでしょう。
※ ステップ編集方法の詳細はこちらをご覧ください。
過去の事例をもとに設計
OUR FUTURESには他にも、各地で実施されてきたFuture Sessionのさまざまな事例を見ることができます。事例をいくつもチェックしながら、”自分たちがやろうとしていることは、これに近いかもしれない”というものをベースにアレンジしてみてください。
「Evolution機能」を使うと、事例をコピーし、自分の新しいセッションとして新規登録することが簡単にできます。
※ Evolution機能の使い方詳細はこちらをご覧ください。
まずは以下の5つの事例が参考になるでしょう。
1.
横断型のプロジェクトを生み出す
2.
組織としての計画をつくる
3.
多様なメンバーでチームをつくる
4.
多様なメンバーでアイデアをつくる
5.
参加者一人ひとりに変化が起きる
STEP3 参加者の招待と事前準備
告知
Future Sessionの告知は、開催日のおよそ1ヶ月前にはじめるのを目安にすると良いでしょう。
これまでに作成してきたFuture Sessionのページの「公開状態」を、「下書き」から「公開」に変更することで、告知と参加者管理のページとして活用できます。
※ 有料版をお使いの方は、公開状態として、特殊なアクセスキーが付いたURLを知っている人のみが閲覧可能な、「限定公開」も選択できます。
参加者に招待状を送る
特に来て欲しい方がいる場合には、直接声をかけるようにしましょう。
OUR FUTURESに登録している方や、Facebookの友人であれば、参加者管理のページから招待状を送ることができます。
スライドの制作
Future Session当日は、プロジェクターを使える環境があれば、スライドを使いましょう。
スライドが必要な理由は、”参加者を置いてきぼりにしないため”です。今、伝えているのはどのようなことなのか、今やって欲しいのはどのようなことなのか。ファシリテーターが、言葉で話すだけでは伝わりにくい作業の流れなどをスクリーンに映し出すことで、参加者全員が状況を共有しながら進められる環境を整えます。
Future Sessionの目的やステップの設計をOUR FUTURESで行うことで、最適なスライドを自動的に作成します。Future Sessionページの管理メニューに表示される「プレゼンテーションモードで開く」をクリックすることで、スライド形式で表示されるようになります。
※ プレゼンテーションモードの使い方詳細はこちらをご覧ください。
道具とレイアウト
Future Sessionを開く前には、対話に必要な道具を参加者の数に応じて揃えておきましょう。
また、進行に合わせて、どのように会場のレイアウトをつくっていくかの計画も立てておくことをおすすめします。
部屋のレイアウトでは、部屋のサイズと参加者数によって、椅子やテーブルの配置を検討します。ここでは、次の4つの型のレイアウトをご紹介します。
- タイプ1:シアター型
- タイプ2:グループ型
- タイプ3:シアター&グループ融合型
- タイプ4:ビッグフィッシュボウル型
シアター型
椅子だけで構成されますので、参加者間の距離が近く、一体感を与えることができます。ただ、通常の講演スタイルにも似た配置になりますので、参加者が受け身になることが懸念されます。
グループ型
通常のワークショップによく使われるスタイルです。ワールドカフェなどの小グループでの対話に向いていますが、全体の一体感に欠けるところがあります。各テーブルの中での対話に夢中になり、主催者の話など、全体で共有したい話をきちんと聞いてもらえない可能性があるので注意しましょう。
シアター&グループ融合型
シアター型とグループ型の両方の利点を合わせたレイアウトが、タイプ3のシアター&グループ融合型です。通常の2倍の空間を必要としますので、部屋が広い場合でしか使えません。椅子の数が足りない場合は、後ろのテーブルに椅子はおかなくても問題ありません。制限時間の短いプロトタイピングの時などは、椅子がない方がかえって盛り上がるからです。
ビッグフィッシュボウル型
参加者全員を一つのフィッシュボウルにしてしまうレイアウトです。このレイアウトの利点は、部屋に入った瞬間に、この場が通常の会議とは全く異なるものだということが伝わるところです。民主的な対話をするのに最もふさわしいレイアウトではないかと思います。欠点は、ファシリテーターや主催者、インスピレーショントークをするゲストなどは、一番内側の円に座るため、どちらを向いて話していいかわからないところです。この問題を回避するためにビッグフィッシュボウルを半円形にすると、タイプ1のシアター型に限りなく近づきます。
STEP4 Future Sessionの開催
参加者をお迎えする準備
当日は早めに会場入りして、参加者をお迎えする準備をしてください。室内にある机や椅子のレイアウトを大きく変えることが多いですから、何人か手伝ってくれる人にあらかじめ声をかけておくといいでしょう。
会場のレイアウトを整えるほか、荷物置き場を用意をしたり、時間によっては飲み物や軽食が取れるスペースも確保します。また、会場までの道のりがわかりにくい場合は、建物の外や部屋の外に案内のプレートを立てておきましょう。
スライドの確認
プロジェクターを使える環境があれば、PCやタブレットやスマートフォンをプロジェクターに接続し、スライドの表示を確認しましょう。
Future Sessionの目的やステップの設計をOUR FUTURESで行うことで、最適なスライドが自動的に作成されています。Future Sessionページの管理メニューに表示される「プレゼンテーションモードで開く」をクリックすることで、スライド形式で表示されるようになります。
Future Sessionの実践
いよいよFuture Sessionの実践です。
参加者と共に、未来思考で楽しみましょう!
アンケートの収集
参加者の気づきや学びを深めて、次のFuture Sessionへとつなげていくために、アンケートを行いましょう。アンケートは、後にレポートをしたり、報告書にまとめたりする時にも役立ちます。感想のほか、データとして定量的にまとめられるような質問項目を用意します。
OUR FUTURESで参加者管理をしていれば、Future Sessionページの管理メニューに表示される「アンケートを管理」をクリックすることで、アンケートの作成と集計が簡単に行えます。
※ アンケートの使い方詳細はこちらをご覧ください。
STEP5 コミュニケーションを継続
コミニュティをつくる
Future Sessionが終わったら、なるべくその日のうちにお礼メールなどを送ってコミュニティを維持しましょう。ここでコミュニティをつくって情報を交換したり、時々問いを投げかけたりしないと、せっかく集まった参加者たちにあまりつながりが生まれません。
OUR FUTURESで参加者管理をしていれば、Future Sessionページの管理メニューに表示される「参加者にメッセージを送信」をクリックすることで、簡単にお礼メールを送ることができます。
※ 参加者にメッセージを送信する機能の詳細はこちらをご覧ください。
また、参加者全体のコミュニティだけでなく、Future Sessionで生まれたアイデアのチームごとにもコミュニティページを準備できると、チーム間の相互応援も生まれやすくなるなど、アイデアの具現化を支援しやすくなります。
有料版の組織会員であれば、次の2つの機能を使うことで、このような参加者全体とアイデアごとのコミュニティページをすばやくつくることができます。
- 複数回のFuture Sessionをまとめられるプロジェクト機能
- プロジェクト内にアイデアごとに作成できる専用ページで、参加者同士がオンライン上でもコミュニケーションを継続できるアイデア機能
※ プロジェクト機能とアイデア機能の詳細はこちらをご覧ください。
コミュニティをつくったら、Future Sessionを通じて生まれたさまざまなアイデアの具現化を支援しましょう。
サマリーをつくる
Future Sessionの後にはサマリーをつくります。サマリーのタイプは、大きく分けて、プロセスレポートと最終報告書の2種類となります。
OUR FUTURESでサマリーを作成し、共有することができます。Future Sessionページの管理メニューに表示される「レポートを編集」をクリックすることで、レポートの作成・編集が可能です。
※ レポートの作成・編集の詳細はこちらをご覧ください。
プロセスレポートをつくる目的は、参加者や、参加したかったけれどできなかった人たちに向けて、その日にあったことを伝えるものとなります。Future Sessionはどんな流れで行われたか、どんなものが生まれたかなどを記しておきます。前半はこんな展開があり、中盤では4つのチームが出来て、終盤ではこんなアウトプットが出ましたという展開を、ステップバイステップで綴ります。
一方、最終報告書は、しっかりと効果を測定する内容となります。Future Session後に回収したアンケートをもとに、数値をまとめていきます。集まったデータから表やグラフをつくると信頼性の高い資料になるでしょう。
また、参加した参加者はどのように感じていたのかなどもまとめながら、次のFuture Sessionの課題を導き出します。Future Sessionの開催前と開催後で、参加者にどのような変化が起きたのかというストーリーをしっかりと記述しておくことも大切です。
STEP6 イノベーションを構想
次回のFuture Sessionを構想する
Future Sessionは単発で開催されることもありますが、イノベーションを起こすためには複数回開催することが必要になります。
OUR FUTURESの有料版をお使いであれば、プロジェクト機能を使うことで、複数回のFuture Sessionをまとめて管理できるようになります。
※ プロジェクト機能の詳細はこちらをご覧ください。
単発で行うときも、複数回で行うときも、ベースとなる考え方は変わりません。
ベースとなる考え方とはつまり、
- 参加者の信頼感を高める
- 参加者に自分で決めてもらう
- 試作(プロトタイプ)してみる
という流れのことです。
単発のFuture Sessionを、例えば3時間で開催するのであれば、その中でこの3つの流れをつくります。3回に分けて開催するのであれば、1回目で信頼関係をつくり、2回目では参加者がやりたいアイデアを決める。そして3回目にプロトタイプをつくる、という進め方もできます。
コミュニティをつくって、参加者のアイデアの具現化を支援して、イノベーションに向けて進めていこうというのであれば、できれば複数回のFuture Sessionを開いた方が良いでしょう。また、複数回のFuture Sessionを計画する場合は、あらかじめ、2回目や3回目のFuture Sessionも構想しておく必要があります。
ネクストステップを提案する
Future Sessionによるイノベーションは終わらないプロセスです。一つのFuture Sessionが成功して、新たな関係性とアイデアが生まれると、次の問いが見えてくるのです。
Future Sessionは、ゴールを設定して、そこに向かって参加者の創造性を引き出していくプロセスです。あらかじめ落としどころを決めないところに意味があります。その日、その場所で、その人たちが集まったからこその、創造的な未来を示してくれることが最大の期待だからです。そのため、プロジェクトは3ヶ月から半年単位で、結果を見せながら進んで行くことになります。大きな期待を持ちつつも、不確定な未来に向かって一つずつ、確かめながら一緒に進んで行く必要があるからです。
Future Sessionのアウトプットから、1年から2年かけて実現したいイノベーションのゴールを仮説として示し、力強くネクストステップを提案していきましょう!
さらなる探求のために(参考図書)
ファシリテーション
- 野村 恭彦(2015)『イノベーション・ファシリテーター ― 3カ月で社会を変えるための思想と実践』 プレジデント社
- フラン・リース(2002)『ファシリテーター型リーダーの時代』 プレジデント社
- 堀 公俊(2003)『問題解決ファシリテーター 「ファシリテーション能力」養成講座』 東洋経済新報社
- ロジャー・シュワーツ(2005)『ファシリテーター完全教本 最強のプロが教える理論・技術・実践のすべて』 日本経済新聞社
未来思考
- ウッディー・ウェイド(2013)『シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する』 英治出版
- 野村 恭彦(2012)『フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み』 プレジデント社
デザイン思考
- ヴィジェイ・クーマー(2015)『101デザインメソッド ―― 革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」』 英治出版
- ティム・ブラウン(2014)『デザイン思考が世界を変える』 早川書房
- 前野 隆司ほか(2014)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』 日経BP社
対話による社会課題解決
- アダム・カヘン(2008)『手ごわい問題は、対話で解決する』 ヒューマンバリュー
- アダム・カヘン(2014)『社会変革のシナリオ・プランニング――対立を乗り越え、ともに難題を解決する』 英治出版
- ジョセフ・ジャウォースキー(2013)『源泉――知を創造するリーダーシップ』 英治出版
- ジョセフ・ジャウォースキー(2013)『シンクロニシティ [増補改訂版]――未来をつくるリーダーシップ』 英治出版
- デヴィッド・ボーム(2007)『ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ』 英治出版
- 中土井 僚(2014)『人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』 PHP研究所
- 中野 民夫(2001)『ワークショップ―新しい学びと創造の場』 岩波書店
問いづくりの力を高める
- 大澤 真幸(2014)『<問い>の読書術』 朝日新聞出版
- 小川 仁志、萱野 稔人(2014)『闘うための哲学書』 講談社
- 小熊 英二(2012)『社会を変えるには』 講談社
- 平田 オリザ(2012)『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 講談社