2030年 人事の役割は、
一人ひとりのキャリア支援になる?
組織開発や事業開発、地域開発のテーマについて、先進的な活動をしているゲストと共に参加者みんなで未来を考える「フューチャーセッションズ未来勉強会」の第2回。
今回は、人事から広報、そしてコンサルタントへとキャリアチェンジしながら活躍を続けられている サイボウズのなかむらアサミさん をゲストに招き「未来における人事の役割とは?」というテーマについて、勉強会をしました。
たった2時間の勉強会でしたが、過去から現在にかけて変化している人事の役割や一人ひとりの働き方を基に、参加者みんなで未来に仮説を立てたことで「2030年の人事の役割」が少し理解できました。
本レポートでは、その勉強会の様子をハイライトでご紹介します。
「人事が人事だけをやる」時代は、終わるのではないか?
これからは、広報やマーケティングなどの知識が求められるのではないか?
サイボウズが目指すのは、
人事がいなくてもよい「風土づくり」
次に話してくれたのは、サイボウズにとっての人事の存在意義についてです。
なかむらさん曰く、サイボウズの人事では「そもそも人事部がいらなくなるのが理想」だと考えられているそうです。
「組織には、『制度』・『ツール』・『風土』の3つが重要で、特に『風土』が重要だと私たちは考えています。複業ルールなどの制度や、チームの情報共有を促すようなツールを取り入れても、根本の風土がその制度やツールを下支えしていなければ、決してワークしないんです。」
これは、言い換えると「組織をより良い方向に進める風土を育めれば、制度やツールを導入せずとも組織は良くなっていく」、つまり「人事はいらなくなる」ということを意味しています。
これらのお話から「組織は明文化された制度やルールよりも、それを支える組織カルチャーが重要になること」が、なかむらさんの話から見えてきました。
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ここで、ゲストと参加者が「人事の未来」ついて対話を深めるセッションに移りました。
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会社は社員の「自己実現プラットフォーム」になる?
フューチャーセッションズ 最上)
「”これまでの人事の変化”から”2030年の人事”は、どうなるだろうか?という問いについて、どなたかご意見はありますか?」
IT企業管理職Aさん)
「昔は組織の形が決まっていて、その形の中で社員をフィットさせるのが人事の役割だったと思います。今は組織の形はなるべくなくす。組織の壁もなくし、なるべく社員が働きやすいように環境を作っていくという役割に変わってきていると思います。」
フューチャーセッションズ 最上)
「その潮流が続いたら、未来はどうなると思いますか?」
IT企業管理職Aさん)
「今はまだ動きやすいといっても、会社の壁、時間の壁がある。でも未来は、会社の壁も時間の壁も無くなるんじゃないかと思う。人が点と点で繋がり自由にコラボレーションしていく働き方になるんじゃないかと。」
人材会社Bさん)
「過去から現在でいうと、明文化できる人事制度などのハード面から、現在では会社の雰囲気や風土とか、個人と個人のあり方が大切になってきていると感じます。」
「会社は多様化する価値観や、個人の活躍を支援していくような役割になっていくんじゃないでしょうか。会社はもっとコミュニティ化していき、人事はその中で横のつながりを作ってつなげ、コラボレートさせていく。そんな役割になっていくと思います。」
人事経験者Cさん)
「ちょうど12年前に人事にいたんです。みなさんとディスカッションする中で思ったのは、昔って制度があってそこに人をはめていた。でも今は、十人十色どころか、100人いたら100人の働き方がある時代。どのように人に制度を合わせるかが重要になっているんじゃないかと。」
なかむらさん)
「サイボウズの人事は、社員に対して『こういう風に人生を歩んだらいいんじゃないか』とアドバイスをするメンターのような存在になってきている。社員一人ひとりが、『個人としてどうしていきたいか』が重要になっているんですよね。」
働き方は、
一人ひとりの生き方に沿った「グラデーションワーク」へ
人が足りない採用難時代の解決策として、サイボウズではこんな取り組みを始めたと言います。
なかむらさん)
「最近では『複業採用』を始めました。ある新潟の人は、本業のNPOをやりながら週2日間だけをサイボウズでリモート複業しています。」
「なぜ複業採用を始めたかと言うと、まず前提として、200人、300人と量で一気に採用する時代は終わってきたと捉えています。その上で、人口も減るし、介護や育児などによってフルタイムで働ける人も減っていく。そんな時代だと、例えば「10%はフューチャーセッションズで、リモートワークによる複業をする」
だけど、「残りの90%はサイボウズに出社して働きたい」とか、一人ひとりが自身の環境に合わせて、パーセンテージを選択して働けるようになっていくと思っています。つまりこれからの未来は、20%コミットの人も、5%コミットの人でも会社が受け入れられるように変わっていくのではないかと思っています。」
誰もが仕事にフルコミットできない時代になり、生き方も多様になったからこそ、それぞれのライフステージに応じた「グラデーション」ある働き方が、今後ますます求められて来るかもしれません。
スペシャリストよりも「越境人材」?
「未来の人事の役割」について、対話で内容を深めるにあたって、参加者からキーワードとして最も多く挙がったのは、分野を超えてキャリアを開拓していく「越境を経験した人事」の重要性でした。
営業やマーケティングなど複数の職種を経験して、現在は人事を務めている参加者の方は、越境のメリットについてこのように話していました。
人事担当Dさん)
「僕は、営業やマーケティングを経験して、今は採用や組織開発などをやっています。いきなりですけど、僕、面接の時のクロージングがめっちゃ得意なんです(笑)。リクルーターとか、ほぼ100%でクロージングできるんです。これは、この人がどんなところについて関心が高くて刺さりそうなのかっていうポイントを探して、差し込みに行くという営業トークなんです。それにマーケティングの経験からは、その人の職歴を見て「今の市場価値だとこのくらいしか年収が伸びないから、うちで一回キャリア積んでから転職した方が良いですよ」とかマーケティングで使うフレームワークなどを利用したキャリアアドバイスもできるんですよね。なので、意外と他の職種を経験しておくと、人事でも活きるんですよね。」
フューチャーセッションズ 最上)
「面白いですね。僕が先日にお話をした美術系の大学生は、就職活動の過程で「美術で有名な大学ではないけど社内課題を解決するためのビジネスプランを作ったことがある学生」が、面接の際に採用担当に強く興味を持たれていたという話をしていました。要は美術の専門知識を持った美大生と、社会課題解決にデザインを使ったことがある美大生という比較の際に、後者の方が興味を持たれたという話だったんだと思います。」
変化が激しい時代において、1つを極めることも素晴らしいことだが、それだけではリスクになることもある、そんな危機感をも感じさせるストーリーです。
今回のレポートはここまで。
きっと遠くない将来、会社や職種の壁が溶け合い「会社」よりも「個人」が尊重されていくような社会になるかもしれません。そうなった未来の人事は「人を管理する」役割から、会社の進みたい方向と個人が進みたい方向をうまくすり合わせ、企業と個人がより良い共創関係になるのを助ける「ファシリテーター」のような役割をになっていくのではないでしょうか。
新たなインサイトが得られた、第2回の未来勉強会になりました。
フューチャーセッションズ未来勉強会は、今後も様々なテーマで開催されますので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
次回のフューチャーセッションズ未来勉強会はこちらから
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インスピレーショントーカー:
なかむら アサミ
サイボウズ株式会社
チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー
法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻修了。経営学修士。教育、IT企業の人事を経て、2006年サイボウズ株式会社に入社、人事を担当。育児介護休暇6年の制定など社員が長く働けるための人事制度を整える。2010年4月より広報を担当し、現在はチームワーク総研アドバイザーとして各企業や学校へ研修等を行っている。サイボウズがチームワークと言い始めた当初から一貫してチームワークに関する活動に携わる。
ファシリテーター:
最上 元樹(もがみ げんき)
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー
2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る。
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【文・北埜航太】
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