”働き方の未来”フューチャーセッション:「未来の働き方:共創空間で働く」
セッションの目的
働き方の未来を考えるフューチャーセッション・シリーズ、第2弾。
今回のテーマは、「未来の働き方:共創空間で働く」です。
業種、業態の壁を超え、誰もが自分の創造性を発揮し、イキイキと働きたいと思ったとき、オフィスはどういう形態をしているだろうか?どういう空間だと共創が促進できるだろうか?
よりよく働く場として、居心地のいい空間をどうデザインすればいいか、ハードとソフトの面から考えたいと思います。
今までに無い新しいオフィスとの関わり方、ちょっとした視点変化でクリエイティブに働く方法など、業界を超え異色の組み合わせでゲストをお招きし、これからの"共創空間"を考え、働き方を問い直します。そして、参加者全員で、新たな働き方の可能性を編み上げたいと思います。
特別ゲスト:
(1) 谷口 政秀さん(株式会社イトーキ オフィス総合研究所 所長)
1982年株式会社イトーキに入社。PJ推進、オフィス空間設計部門、商品開発部門を経て、2001年ネットスタイル社を起業し、Webサイトと銀座にインテリアショップを開店する。2011年より社会変革を調査し未来の働き方、働く場について研究を行っている。
http://www.itoki.jp
(2) 池田 陽介さん(作曲家)
大学在学中に作曲業を始める。卒業後、株式会社スクウェアおよびスクウェア・エニックスにて音楽制作やゲーム開発のプロジェクトマネジメント業務を経験した後、フリーランスの作曲家として独立。J-POPではゴスペラーズの他、ミュージカルや演劇、テレビ番組やドキュメンタリ作品、多くの企業の商品・サービスなどのCMやプロモーションなどを手掛けている。
http://yosukeikeda.com
インフォメーション
- 開催日時
-
2013/07/24 (水)
18:00 ~ 21:00 - 応募締切日時
- 2013/07/24 (水) 21:00
- 会場名
- ビジネスエアポート青山(http://business-airport.net/)
- 住所
- 東京都港区南青山 3-1-3 スプライン青山東急ビル6F ビジネスエアポート青山
- > google mapで表示
- 定員
- 20 人
- 参加費
- 会場払い 3,000 円
- 備考
開場 17:45
メンバー
対象者
新しい働き方を実践されている方、働き方を模索されている方、働き方を変えていかなければいけないと感じている方。
詳細説明
”働き方の未来”フューチャーセッションは、ビジネスエアポート青山で、毎月定期開催していきます。
過去のセッションの様子はこちらをご参照ください。
◆関係性をつくる
第2回目の”働き方の未来”フューチャーセッションには、ゼネコン勤務、家具製作会社勤務、シェアオフィス運営者、デザイナー、学校教員、人事担当、自宅でシェアリビングを運営されている方、研究所で働く制度づくりをされている方など、約20名の方にご参加いただき、人が交わり共創するための空間や働き方について考えました。
ゲストである谷口政秀さん(株式会社イトーキ オフィス総合研究所 所長)は、未来の働き方や働く場について研究されています。昨年出版された『MAKE SPACE メイク・スペース スタンフォード大学dスクールが実践する創造性を最大化する「場」のつくり方』からdスクールでの事例や、つい先日訪問されたシリコンバレーでの視察の話を交えながら、誰もがクリエイティビティを発揮できる空間づくりについてお話くださいました。
(FUTURE STORIESには、フューチャーセッションの場作りについて谷口さんにお伺いしたインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください。『MAKE SPACEに学ぶ、フューチャーセッションの場作りのコツ』https://www.ourfutures.net/stories/7)
もう一人のゲストは作曲家の池田陽介さんです。現在はフリーランスの作曲家として活躍されていますが、過去にはゲーム会社でゲームや音楽制作のプロマネなど、いわゆるオフィスワークも経験されています。現在作られている音楽も、歌謡曲から舞台音楽、CMのプロモーション用音楽など様々。音楽を通して芝居のリアルな空間を作ったり、プロモーションの疑似的な空間における「音を作る」立場と、同時にミックスやマスタリングを行う「音を聞く」という立場から、音と共創について話題提供くださいました。
◆テーマに沿って知識を広く持ちよる
フィッシュボールでは、最終的なイメージとして「業種・業態の壁を超えた共創」を持ちつつも、まずは組織内でいかに共創を生み出すかを中心に対話が広がりました。空間や音、組織風土との関連性、日本的組織と共創の親和性など幅広い観点が挙げられました。(※詳細は後述の「フィッシュボールでの対話」をご覧ください)
◆プロトタイピングする
フィッシュボールでの刺激的な対話を経て、参加者が大事だと思う「共創のキーワード」をもとにチームづくりを行い、4つのアウトプットが出来上がりました。テーマは「どんな共創空間を作りたいか」です。
・ 遊ぶように働き、働くように遊ぶ「遊美場」
・ チームワークとソロワークが響創する「響創空間」
・ それぞれ想いを持った働く人が交じりあう
「共想と共感が生まれる交差点〜主人公はみんなひとり一人〜」
・ チョウチョが花の蜜を吸いにくるように人をすいよせる「花の蜜」
フィッシュボールでも上がった「人が集まるリアルな空間」、「働く/遊ぶ/学ぶの境界がない空間」、「チームワークとソロワークのバランス」といったキーワードを体現する空間となりました。そのための空間的な仕掛けはもちろん、人をつなげるためのファシリテーターの存在が共通で挙ったのも印象的です。
大掛かりな空間を作らずとも、今すぐできる「自分のオフィスでの工夫」は、「会議スペースにソロワークができる退避場を作る」、「自席にお菓子やお茶を用意して、自分が人が交わる交差点、バーのおせっかいママ/マスターになる」の二つです。
◆アクションを生み出す
最後は全員でサークルになり、今日の感想を共有しました。
共創空間に対するポジティブな感想と同時に、「みんなやりたいことや向かう方向性は一緒のように感じるが、なぜワンフロア400人のオフィスになると嫌な空間になるのか」といった疑問や、「空間を変えるのは組織の概念を変えることではないか」といった問いかけもありました。
また、「日々の仕事はクリエイティブとは対極にあり、今日話し合った内容と今の働き方のギャップが大きい」、「今回考えたような共創空間で働くのは、高い自律性が求められる厳しい働き方なのではないか」、「空間だけでなく、働きやすい組織作りなどムーブメントを作っていくことが大事ではないか」といった、未来の働き方に向けた文化改革活動につなげていこうという意見も共有されました。
◆フィッシュボールでの対話
■人が集まるリアル空間のオフィス
「アメリカのシリコンバレーでは、AppleやFacebook、LinkedInなどのIT企業が、巨大な本社を建設、あるいは計画を立てています。その他にもこれらのIT企業のオフィスとは別ですが、優秀な世界中の人材を集めるために、就労ビザの問題が発生しない海上の船にオフィスを作るといった計画もあります。
ここでのオフィスは、社員が働いているかを監視するための空間ではありません。これらの企業は、人と人が交わるリアルな空間から生まれてくるものを重視しています。ビッグデータなどの技術革新によって情報を収集することは容易になりましたが、データの集合ではない、リアルな空間を作ろうとしています。」
「仕事をこなすのではなく、出会うためのオフィス空間を演出する工夫として、例えばスタンフォードのd.schoolにあったのは、立っている人と目線の位置があう背の高いデスクとチェアです。デスクとチェアの背が高いと、座って作業している人が何をしているのか、横を通る人の目に自然と入ります。そうすると、作業しているものに関して通りがけの人と会話が生まれたりします。会話が盛り上がると、さらに他の人も集まってきます。目線の位置が合うことによって、対等な感じを作ることができ、話しやすくなるのです。」
「オフィスの雰囲気としては、賑やかなところと静かなところの両方があり、各自が場面に応じてどちらにいたいかを選んでいます。例えば、アイデアが欲しいときには、人と交流するスペースに出て行きます。また、デスクに座って作業している時だけでなく、オフィスにいればいつでも仕事になりうるのです。食堂でご飯を食べていても、人と会話をする中で新しいアイデアが生まれれば、それは仕事になります。食堂にも空間の工夫が見られて、机が小さいんですが、距離を近くして話しやすい雰囲気作りをするために、意図的に小さいのではないかと思っています。」
■音と空間の関係性
「"Noise"を騒音と訳すと悪い意味になってしまいますが、ノイズをうまく場に活用しているシーンは結構あるのではないでしょうか。例えば、カフェで作業することを好む人も多いですが、カフェにはバックミュージックが流れています。パブはというと、声を張り上げないと話し声が聞こえないくらいの賑やかさ。でも、声を張り上げることによってテンションがあがり、話している人同士が親密になりやすいんです。また、テンションがあがってたくさん話すと喉が渇くので、アルコールの注文が増えてお店も儲かります。
自分の経験で、ホテルのホールを使ってパーティーをしたことがありますが、最初はなかなか盛り上がりませんでした。そこで、声を少し張り上げて話さないといけないくらいにBGMのボリュームをあげたんです。すると、その方が場は盛り上がりました。」
■主体的に関わることができるオフィス空間
「用意された空間は、人や空間との間に距離を感じてしまうように思います。日本では、オフィスなどの空間は与えられるものという認識があり、働く人が参画する接点が少ないです。そうすると働く人のニーズを満たしたオフィスにはなりにくいですが、一方で自分たちで作るのは面倒だから人任せにしてしまっているところもあると思います。」
「什器を充実させて完璧な空間を最初に作るのではなく、そこにいる人が環境や空間を自分たちで作っていくという考えが大事なのではないでしょうか。与えられたオフィスではなく、自分たちがどのようにしたいのかを考える。それは常に変化しつづけるものですが、考えて実現させていくことが大事です。ただし、DIYでオフィスの全てを自分たちで作ろうとすると大変なので、(イトーキのような会社が)ブロックパーツのように必要最低限のものを用意して、それを自分たちで組み合わせて作れるようになると良いですね。」
■働くことと音の関係性
「自分の経験から、デザイナーは職場で音楽やラジオを普通に流しながら仕事をしています。一方で、総務人事などのデータを扱う部署は静かな空間で仕事をしていました。デザイナーが音楽を流しているのは、自分なりに仕事のしやすい環境を作ろうとする工夫なのではないでしょうか。『音楽を聞きながら』は仕事ではない、という考えは変えてもいいのではないかと思います。
ネットで調べたのですが、単純作業は音楽を聞きながらのほうが作業効率が上がるそうです。しかし、クリエイティブな作業に関しては、音楽を聞きながらの方が集中できるというデータと、できないというデータと両方あり、見解はバラバラでした。それに対する考えとして、音楽には個人の趣味嗜好が反映され、曲名や歌手名に気が向いて集中がそれることがあったりします。でも、波の音など『音』ならいいのではないでしょうか。実は今(セッション中に)波の音を流していますが、これもノイズと言えます。でも、ノイズがない、無音の状態の方が本当にいいのでしょうか。一時期防音マンションに住んで仕事をしていましたが、生活の中に音が無さすぎて反対に気持ち悪くなりました。仕事においては無音の方がいいと考えられることが多いですが、生活を含めて『生きる環境』の中で働くことをとらえると、音はあった方がいいのではないでしょうか。」
「自分自身がデザイナーであり、現在はデザイナーの人材派遣の仕事をしています。デザイナーの頃は事務所で音楽が流れていても全く気になりませんでした。しかし、人材派遣の仕事を始めるようになり、企画を考えたりPowerPoint資料をつくったり、事務作業を始めると途端に気になるようになってしまいました。」
「ソロワークの時は音の有る無しどちらがいいか、色々な考えがありますが、コークリエイションでは音があった方が共創が促進されるのではないでしょうか。」
「音や音楽の使い方として、別の音をマスキングするという側面もあります。例えば、トイレの『音姫』はマスキングのための音ですよね。人間には選択的聴取という能力があります。オフィスでキーボードのカタカタ音やパソコンの動作音が響いて気になることがありますが、川の音など別の音を流してあげると、それを知覚することで他のことが気にならなくなったりします。」
■ソロワークとチームワークのバランス
「ソロワークの時は、パソコンの動作音が気になったりするので、イヤホンで別の音楽や音を聞いたりします。座る椅子はソファの方が仕事がはかどります。チーム作業との時はというと、緊張した空間よりもリラックスした空間の方がいいのではないでしょうか。すぐにアイデアを書けるホワイトボードが置いてあったり。」
「個人で生産性をあげる仕事と、チームでやる仕事。この二つのバランスをとって、適切に選択できることが大事ではないでしょうか。」
「デザイン会社のIDEOと一緒に働いたとき、日本の会社はソロワークが多いと言われました。会議では報告と批評がメインで、会議の後に一人で修正作業をするから残業が増える。『なんで会議で共有するときに、一緒に作らないのか?』と不思議がられました。」
「アメリカのYahoo!で、会議のPowerPoint資料を禁止にされたのはいいですよね。ソロワークではプレゼンテーション作りの作業が多いですが、会議で却下されるとまた作り直しになってしまうので。」
■日本の組織と「共創」
「日本人のメンタルモデルとして、自分が作ったものや見せたものを否定されるのが嫌いという傾向があると思います。日本は、組織的にNGを出されると減点されるという気持ちが働くので、なかなか共創にならないのではないでしょうか。」
「新しい空間や働き方を作るのは、会社のカルチャー作りそのものです。作った空間がうまく運営されるためには、マインドセットや人事制度などとのすりあわせが大事ではないでしょうか。そこが日本は苦手だと思います。」
「そもそも『共創』とはどういうことかを共創しないですよね。そこも人事総務まかせ。実際に働く人がどのように働きたいのか、そこから空間を作るのが大事ではないでしょうか。」
「現在、会社で、新しい共創のための空間を作ろうとしています。会社として、世の中の課題に対して、解決策を提供したいという社是があります。今までにない課題解決をしようとしたとき、今までにない空間や音などが求められるのではないかと思います。」
「仕事において、従来求められてきた生産性と同時に、どれくらいの創造性が求められるか。それによって、空間の変革が求められていると思います。日本では、『裏のオフィス』での創造が活発だったのではないでしょうか。例えば、ソニーなどの会社では、昼間のオフィスはシーンとしています。でも、夜は飲みニケーションで交流する。このように、オフィスではない『裏のオフィス』で創造するということもあるのではないでしょうか。この場合、反対に昼のオフィスはシーンとしていた方が、夜が盛り上がります。また、昼間のオフィスでは、『創造しなきゃいけない』という強制力も感じたりします。
このように、日本人は夜に飲みニケーションで共創する方が向いているのではないでしょうか。最近は飲みにいかないという人が多いので、この文化的変化の方が創造性への影響は大きいのではないでしょうか。
また、集合知によってクリエイティビティは高まるのでしょうか。それとも、結局は最終的に個人の創造性が必要なのでしょうか。そのとき、本当に必要なのは共創空間なのでしょうか?個人の創造性を高めるべきなのでしょうか。」
「日本でも共創に『表』と『裏』の区別がなくなりつつあるのは、『表』で勝負したい、成果出したいという考えがあるからではないでしょうか。」
「しかし、飲み屋は『裏』の共創空間であったと思います。それがなくなって、『表』で勝負に変わるのでいいのでしょうか。」
「『表』が重視されるようになった一つの理由として、ワークライフバランスの考え方があると思います。毎晩飲みに行くのではなく、家庭の時間も大事にしたいという価値観もあります。そのためには、『表』の時間、就業時間の中で共創できればと思います。」
「どのような環境でも、飛び抜けた天才というのはいます。そういう人は一人で作業した方が断然効率的です。日本の組織では、これまで生産性が重視されてきました。しかし、これからは生産性ではなく、新しいことを生み出していくことが必要とされているのではないでしょうか。」
「デンマークの小学校では、子供がそのときの状況に合わせて選べる空間づくりをしています。例えば、一人で集中して勉強するためのスペースだったり、グループワークのための空間だったり。勉強に飽きた子がいれば、廊下に出て遊べるようになっています。でも、廊下に出て遊ぶことで、勉強がわからなくなったら自己責任であるということも教えています。このようにメンタリティと空間をつなげて考えないといけないと思います。また、人間の『人間らしい生き方』が最初にあって、そのための空間を考えるべきではないでしょうか。遊んでいる、働いている、学んでいるといったことの境界がない空間が良いですよね。」
「教育と音の関係を考えてみると、幼稚園にはチャイムがないですが、小学校になると規律性が生まれ、チャイムでの合図が始まりますよね。学校でのチャイムというのは統制の印だと思います。空間をつくるだけでなく、チャイムのようにそこに埋め込まれた記号についても考慮しなければいけません。」
「仕事と仕事でないことのボーダーがなくなった時に、だれが仕事をしていると決めるのでしょうか。例えば、会議中に後ろで踊っている人がいたとして、その人は会議に対して深い思いを持って踊っていたとしても、周りからは仕事をしていると思われないですよね。自分が仕事をしていると思ったら「仕事」でしょうか。それとも上司や人事が判断するのでしょうか。
「クリエイティビティのある会社では、暗黙のルールというのがありますよね。自由に働きつつ、みんなその暗黙のルールに乗っ取って仕事していますよね。」
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